ほしのともだち ぴりん

押川理佐「ほしのともだち ぴりん」(世界文化社)を読んだ。
pirin
七夕の夜、しゅうくんは願い事を変更しようと短冊を引っ張る。
すると、いっしょに星の子が落ちてくる。
天の川で短冊釣りをしていたのに、引っ張られてしまったのだ。
元の場所に戻るには、
たらいの水に天の川を映してのぞきこめばいい。
ところが、雨が降ってきて……。

これは、建礼門院右京大夫という人の読んだ
「きかばやな二つの星の物語 たらひの水に映らましかば」という歌にちなんでいるらしい。
平安時代には、たらいの水に星空を映してながめる習慣があったのだそうだ。
でも、おっこちてきたぴりんは、
現代の星の子らしく、元気で明るく、現実的だ。
「魔法が使えるようになりたい」なんて願いには「自分で努力しろ」
あげくのはて、しゅうくんのベッドに寝転んでおやつを食べる始末。

かわいいお話には、ぴったりのかわいい絵がついている。
イラストレーターは、一條めぐみさん。

市販されているのではなく、「おはなしワンダー」という
保育園などで配布される形の絵本。
七夕の短冊といっしょに家に持ち帰る保育園児の姿が目にうかぶ。

押川さんは、現在、NHK「ざわざわ森のがんこちゃん」や「えいごでがんこちゃん」の脚本を手がけている。

押川理佐さんの所属する同人誌「泳げ!」27号も出た。
oyoge27
こちらは、児童文学に限らず
歴史小説、旅行記、書評など自由に展開している。
読んでみたいなと思われる方はこちら。
およぶろ
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さよなら、田中さん

鈴木るりか「さよなら、田中さん」(小学館)を読んだ。
sayonaratanakasan
小学校6年生の田中花実。母親と二人で暮らしている。
父親は、亡くなったと聞いているが、かなり怪しい。
もしかしたら犯罪者なのでは? と花実は思っている。
お母さんは、男の人たちに混ざって、工事現場で働いている。
痩せているくせにものすごくよく食べ、落ちているものですら拾って食べてしまう。
工事現場は「いいお金になる」という割に、いつも貧乏で、食品は激安スーパーで、半額になったものを、さらに値引きしてもらう。
とにかく貧乏ではあるけれど、花実は、金持ちの家をうらやむでもなく、自分を卑下することもなく
明るく楽しく生きている。

かなり前から話題になっていた本だ。
作者は現中学3年。
でも、お話を書いたのは、小学生の頃。
「12歳の文学賞」というコンクールで、4年生から連続3回も大賞を取って
その作品を元に作った本だという。
テレビでCMもバンバンやってて
だからこそ、「うさんくさい」と思ってた。
たいしておもしろくないのに、「中学生作家」ということをネタにして売ってるんじゃないか。
あまりもてはやされているから、ちょっとひがんでたのかも。

けど、読んでみて、びっくりした。
衝撃的だ。
なんだ、このうまさは。
これが、小学生(今は中学生だけど)の文章か?

とにかく文がうまい。
表現が適切だ。語彙が豊富。
ユーモアもある。
現役の子どもだから、こどもの心情がリアルだ。
そして、子どもから見た大人の描写の見事なこと。

そして、ところどころにキラリと光るお母さんの名言。
るりかさん、あなたはどうしてこんなセリフを知ってるの?
どうして、こんなこと、思いついたの?


作者の年齢は、もうどうでもいい。
普通に作家として見事だ。

感動したので、同人仲間にメールで
「『さよなら、田中さん』、読んで」って伝えてしまった。

これは、その昔、MOEでデビュー前の佐藤多佳子さんの「サマータイム」を読んだときに匹敵する感動。

百物語②不気味のとびら

昨年秋、怖い話の依頼が立てつづけに来たときの作品の一つ。
「5分ごとにひらく恐怖のとびら 百物語②不気味のとびら」(文溪堂)ができてきた。
hyakumonogatari
1巻が既に出ていて、そちらに1話目から20話まで載っている。
この巻は21話から40話。
書き手は、緑川聖司、後藤みわこ、野村一秋、高田桂子他。
わたしは、28話目「手のひらの中の秘密」
友だちにそそのかされて、軽い気持ちで万引きをしてしまった女の子の話だ。

他の人の話は、本になって初めて読んだのだが
これが、思いのほか、怖い。
わたしは、怖いテレビ番組を見たり、怖い話を読んだりすると
後頭部が痛くなるのだけど、
今、めちゃ、痛い。

このお話は、わたしのこれまでの作品の中で最短で、
なんと、原稿用紙5枚。
依頼をいただいたとき
「絶対、ムリ……」
と思った。
5枚なんて、あらすじにもなんないじゃん。
長くするのは、いくらでもだいじょうぶ。
この前も、もともと15枚だった原稿を、50枚に加筆修正したのだけど
ぜ~んぜん、苦しくなかった。
でも短いのはなあ……。

5枚かぁ……と頭を抱えながら、とりあえず書いたら20枚。
お話にならない。
何度も書き直して、というか
削って、削って、削って、
血を流しそうな勢いで削って5枚におさめた。
山本悦子の涙ぐまし努力を感じていただけたら、幸いです。

講演会のお知らせ

8月4日(土) 小牧市立図書館で講演会を行います。


 児童文学作家 山本悦子さんによる「作家が語る 児童文学の世界」

 日時  8月4日(土)10時30分~12時

 場所  小牧市立図書館1階視聴覚室

 対象  小学4年生以上 

 参加費無料  

 くわしくは、こちらをどうぞ 小牧市HP

 お近くの方、どうぞいらしてください。


 また、8月18日には、碧南市文化会館で講演会を行います。


「心を見つめる~児童文学のススメ」

日時   8月18日(土) 13時~14時45分

場所   碧南市文化会館 3階大会議室

対象   碧南市の保護者並びに教育関係者

こちらは、碧南市の小中学校の保護者か教育関係者のみになっています
既にチラシは配布されていますが、「どうしよっかなあ」と迷っておられる方、是非、おいでください。

かぶきやパン

かねまつすみれ「かぶきやパン」(童心社)を読んだ。
kabukiyapan
「とざい、とーざい
ほんじつ 十じをもちまして、
まちのパンや「かぶきや」かいてんと
あいなりまして-ございます
舞台で口上をはじめるのはメロンパン。
つぎにあらわれしは、クロワッサン。
「とわれてなのるもおこがましいが、
うまれはかぶきや、いしのかま……
そのなは、みかづきすけろく!
大見得を切るとすかさず声がかかる。
「いよっ! いきだねえ」
「すてき!」
こんな調子で、パンたちが入れ替わり立ち替わり口上を口上をのべる。

かぶきというと、子どもには縁がなく
とっつきにくい印象を持つが、とんでもない。
この、ことばのリズム。
一度読んでもらったら、次は自分で声を出して言いたくなるはず。
歌舞伎とパンをくっつけるなんて
すごいところに目をつけたなあ。
長野ヒデ子さんの絵が
驚くほどぴったりだ。
よくこんなにパンを歌舞伎調にできたものだ。
大変だっただろうなあ。

この絵本は、童心社と児文協が行っている「絵本テキスト大賞」の大賞作だ。
作者のかねまつさんのデビュー作となる。
かねまつさんとは、数年前にお会いしたことがある。
その後「絵本テキスト大賞」を受賞したと聞いて、よかったなあと思った。


歌舞伎の絵本を見て
息子その2が小学校の4,5年の頃、いっしょに歌舞伎を見に行ったことを思い出した。
「西遊記」だった。
歌舞伎の言い回しや、効果音の作り方(舞台袖で音を鳴らしたり)、衣装が目の前でさっと変わるところ
息子にとってはなかなかおもしろい舞台だったようで
家に帰ってからも、何度もそのことを口にしていた。
歌舞伎って、意外に子どもにうけるのかも。
プロフィール

yamamoto etsuko

Author:yamamoto etsuko
「神隠しの教室」(童心社)で、第55回野間児童文芸賞受賞。「先生、しゅくだいわすれました」「がっこうかっぱのイケノオイ」「ポケネコにゃんころりん」シリーズ、「テディベア探偵」シリーズ、「夜間中学へようこそ」などの著書を持つ児童文学作家。愛知県半田市在住 児童文学同人誌「ももたろう」同人、日本児童文学者協会会員 JBBY会員
〔家族〕 夫 息子その1(人間) 息子その2(人間)、息子その3ルウ(トイプードル) 息子その4モカ(トイプードル)

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