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傑作はまだ

瀬尾まい子「傑作はまだ」(エムオン・エンタテイメント)を読んだ。
kessakuhamada
50代、ほぼ引きこもりの作家加賀野のところに
息子・智がやってくる。
二十五年前、一度だけ夜をともにした美月が生んだ息子だ。
結婚する気はなかったし、美月もそれを望んでいなかった。
代わりに毎月10万円をおくった。
その代わりに、毎月一枚ずつ写真が届いていた。
だから顔には見覚えがあった。
智は、一カ月この家に住ませてほしいと申し出る。
智は、みるみる近所になじみ、顔なじみを作り、加賀野を家から引っ張り出す。
他人とは関わらずに暮らしていた加賀野の生活が変わり始める。

はじめは、加賀野の設定に、
ちょっと嘘くさいなと思って読んでいた。
いくらこもりがちな作家でも、こんなやつはおらんだろ。
加賀野の作品のあらすじがいくつか書かれるのだが
こんな小説が売れるとは思えない。
息子とか娘とかが
自由に暮らしている男のもとに突然現れるという設定もありがちだ。

でも、読んでいるうちに、
どんどん、引き込まれていく。
いつもそうなんだ。
設定に疑問を感じながら読み始めるのに
自然にそんなことはどうでもよくなっていく。
で、最後は、いつものごとく号泣。
なんでしょうね、このテクニック。

作中の加賀野の作品にリアリティがないのは
作者・瀬尾まい子の作品の真逆だからなのだろう。
なにせ、加賀野の作品はどれもこれも暗く
救いようのない結末だから。

さすが、瀬尾まい子。
今回も癒やされた。

全然違う話なのだけど。
瀬尾まい子の「そしてバトンは渡された」を持っている人は、一度確認してほしい。
本の上の部分が不揃いなのだ。
uewomite
はじめは、わたしの本だけなのかと思っていた。
たまたま紙を切断する機械が不調とか。
でも、最近、本屋さんで確認すると
重版されたものもそうだから
あえてこうしてあるのだろう。
これは、どういう意図があるのか。
どなたかご存知の方は教えてください。
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羊の告解

いとうみく「羊の告解」(静山社)を読んだ。
hityjinokokukai
ある朝、突然警察が家にやってくる。
何が起こっているのかわからずとまどう家族。
その中で、すべて察していたようにスーツを着た父親が二階から下りてくる。
そして、そのまま連行されていく。
父親は、殺人を犯したらしい。

物語は、朝の突然警察が現れるセンセーショナルな場面から始まる。
必死で冷静さを保とうとする母。
わけがわからずぐずる小学生の弟。
中学3年の涼平も、登校はしたものの混乱している。
このあたりの緊迫感は半端ない。

まだ何も知らない友人たちは、いつものように接してくる。
けれど、涼平の気持ちはざわついている。
本当のことを知られたらどうなるのだろう。

加害者側からの話というと
吉野万理子「赤の他人だったら、どんなによかったか」が思い出される。
あれは、親戚だったが
今回はもっと苦しい。父親だ。
しかも涼平は、父親に似ているのだ。
自分の中にも凶暴なものが潜んでいると感じ
自分という存在から目をそらしたくなる。

読み始めた直後から、物語の世界に引き込まれてしまった。
気がついたら、涼平とともに、どん底に突き落とされ
彷徨い、立ち尽くし、息をひそめていた。
こんなに感情移入してしまうことはめったにない。
それは、やっぱり
作者の心理描写が見事なせいだろう。
いとうみくは、やっぱりすごい。

この本、実は、ずっと探していた。
田舎なので、どこの書店に行ってもちっとも見つからないのだ。
注文すればいいのだけど
注文してから届くまでがじれったい。
(冷静に考えたら、探し回るより最寄りの書店に注文したほうが早いのだけど)
それに、本屋さんで「あった!」と手に取る瞬間が好きなのだ。
書店さんに行くたび「羊の告解、羊の告解」といってたら
夫も一緒に探してくれていたのだけど
現物を見た夫は
「あれ? 違うじゃん」
彼は「羊の国会」を探していたのだそうだ。
「変わった題名だなあと思ったけど、童話だからあるのかな」って。
ないでしょ。
羊の参議院とか衆議院とか(笑)
けど、音だけ聞いたら、確かに「国会」の方がなじみがある。

告解は、神に犯した罪を告白し、許しを求めること。
この物語は、許しを求め、与える物語なのだ。

義母のお墓参り

昨日は、三重県浜島町の夫の実家に日帰りで行ってきた。
義母のお墓参りに行ったのだ。
isejidoushadou
行く先々で桜がきれいに咲いていた。
義母のお葬式のときも、桜が満開だった。
あれから満開の桜を見るたびに義母を思い出す。

実家に行く前にお墓に寄った。
夫が、お土産に持っていったお菓子をお供えするといいだした。
わたしは、お墓に食べ物をお供えするという考えそのものがないのでびっくりしたが
まあ、夫が言うならいいだろうと置いてきた。
実家に行ってそのことを話すと、義兄嫁に、
「そないなことすると、サルやらイノシシやら来るんであかん」としかられた。
「まあ、ええわ。明日、片付けてくるで」
すんません。
お墓にサルやイノシシがくるのか。
考えもしなかった。

実家には、義兄夫婦と、姪っ子家族が住んでいる。
義兄夫婦は、とても大らかな人なので
わたしはこの家に来ると、思い切りリラックスしてしまう。
姪も小学生のころから知っているので、気楽なものだ。
わたしは、夫の実家の人々が大好きなのだ。
この先夫と離婚することがあっても
実家の人たちとはつきあっていきたいと、割と真剣に考えたりする。

ただ、この人たちにはひとつだけ、困った習性がある。
それはやたらに大量のものをくれるということだ。
くれるのは主に義兄嫁。
昨日も、1歳児がゆうに立ち上がって入れるくらいのデカい袋に
乾燥わかめを大量につめたものを、2袋もくれようとしてた。
「そんなにいらない」というと、
「遠慮せんでええわあ」という。
「ううん、遠慮じゃなくて、そんなにもらったら、これから3年くらい、毎日ワカメを食べないといけなくなるから」
「近所に配ればええやんか」
「いや、近所にそういうものを配る習慣はないし」
攻防の末、一袋もらうということで手打ちになった。
(一袋でも、食べ終えるのに1年はかかると思う)

結婚したころは、この「お断り」ができなくて
毎回、うなされるほど大量のものをもらってきていた。
うれしいけど、多いんだもの。
干物200枚とか
大きなメロン6個とか(しかも食べ頃がみんな同じ)
殻付きのカキ、トロ箱いっぱいとか。
結婚して最初の帰省で、大きな鰹を一本まるまるもらったときは、泣きそうだった。
さすがに、最近は「もっと減らしてほしい」といえるようになったが
向こうもさるもので、こそっとトロ箱に入れて「持ち帰り用」になってたりする。
忘れたふりをして置いていこうとすると
「なに、素知らぬふりで帰ろうとしとんねん」と止められる。
でも、そんなやりとりをしながらも、いただいたものは
全部おいしくいただいている。
夫の実家からもらうものは、みんな、おいしい。

鳥羽付近のコンビニのATMでお金を下ろしたのだが
ボタンを押したとたん、
「よう来たなぁ」
お金を出すと
「おおきんな。またおいで」
いいなあ。三重県ATM。

初恋まねき猫

小手鞠るい「初恋まねき猫」(講談社)を読んだ。
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中学二年の龍樹は、左腕、左脚の骨折で、自宅療養中。
二階の自分の部屋には上れないので、亡くなった姉の部屋のベッドで退屈を持て余している。
すると、窓から一匹の美しい猫が入ってくる。
まるで恋に落ちるように、龍樹は、猫から目が離せなくなる。
アンジュと名前をつけ、毎日猫がたずねてくるのを心待ちにするようになる。

実はその猫は、近所に住む6年生のしおりが飼っていた。
名前はサージュ。

ある日、龍樹が、アンジュ(サージュ)の首輪に
自分が書いたアンジュの絵をくくりつけたことから
二人は、アンジュを介して手紙のやりとりをするようになる。
しおりには12歳の女の子としてのなやみが
龍樹には、14歳の少年としての迷いがある。
手紙のやりとりをする中で
お互いの心に寄り添っていく。

すごく爽やかで、甘やかで、すっきりしてて
この表紙絵の青空のようなすてきなお話だった。
読み終えたとき
ああ、よかったなあと幸せな気持ちになった。
ソーダ味のキャンディみたいな、
青空をすくって宝石にしたようなお話。

お話もすごくよかったのだけど、
最初にこの本を手にしたとき、驚いた。
紙がいい!
表紙の手触りいい。
見返しの紙も、扉もすごく素敵だ。
そしてそして、この帯!
こんな紙で帯を作るんだ。
思わず装丁の人の名前を確認した。
岡本歌織さん。
覚えておこうっと。

ちいさなハンター

佐藤まどか「どうぶつのかぞくチーター ちいさなハンター」(講談社)を読んだ。
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サバンナにすむチーターの兄弟、ディノ、チノ、ゼノン、ララ。
唯一メスのララだけは、お母さんについて狩りの練習をしているが
オスの兄弟たちは、ほとんどじゃれているだけだ。
やがて、巣立ちの日がやってきて、お母さんは離れていってしまう。
こどもたちだけで生きていかなくてはならないのだ。

チーターは、動物の中では最も足が速い。
それくらいの知識はあったが、
最速で走れる時間はほんのわずからしい。
速く走るために体は軽く、頭は小さい。
あごも歯も小さく、
他の猛獣に襲われたらひとたまりもないらしい。
だから、せっかくエサをとっても
それをねらってハイエナやライオンが来たらあわてて逃げないといけないのだ。
初めて聞く事実だった。
さぞかし無敵なのだろうと勝手に思っていた。

それにしても、このチーターのオスたちの脳天気なこと(笑)
メスのララがこんなに凜々しいのに。
ライオンもエサをとるのはメスだし
自然界においては、オスって頼りにならないんだなあ。
でも、この物語では、そんな頼りない三兄弟が、知恵を絞って生きる道を探し始める。

今までなんとなく想像してたチーターとはちがう生態を知ることができて面白かった。

このどうぶつのかぞくシリーズは
他にもパンダ、ペンギン、アフリカ象、カンガルー、ライオン、ホッキョクグマ、キリンが出ている。
きっと今まで知らなかった、動物の姿を知ることができるんだろうな。
ちょっと読んでみたいなと
この「ちいさなハンター」を読んでみて思った。
動物好きな子なら、きっと全巻制覇するんだろう。
プロフィール

yamamoto etsuko

Author:yamamoto etsuko
「神隠しの教室」(童心社)で、第55回野間児童文芸賞受賞。「先生、しゅくだいわすれました」「がっこうかっぱのイケノオイ」「ポケネコにゃんころりん」シリーズ、「テディベア探偵」シリーズ、「夜間中学へようこそ」などの著書を持つ児童文学作家。愛知県半田市在住 児童文学同人誌「ももたろう」同人、日本児童文学者協会会員 JBBY会員
〔家族〕 夫 息子その1(人間) 息子その2(人間)、息子その3ルウ(トイプードル) 息子その4モカ(トイプードル)

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