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こんな夜更けにバナナかよ

大泉洋主演「こんな夜更けにバナナかよ」を観てきた。

筋ジストロフィー症で体の不自由な鹿野さんは、
何人ものボランティアに支えられ、自立生活を送っている。
医大生の田中くん(三浦春馬)もその一人だ。
田中くんの恋人美咲ちゃん(高畑充希)は、
田中くんの様子を見に鹿野家を訪れ
そのままボランティアとして通うハメに。
わがままで、自由で、決してあきらめない鹿野さん。
そんな鹿野さんといると
自分らしくいられると、美咲ちゃんは感じるようになる。

鹿野さんは実在の人物だそうだ。
映画の最後に、本物の鹿野さんの映像も出てくる。
12歳で筋ジストロフィー症を発症し
20歳まで生きられないといわれた彼は
何度も死の淵をさまよいながら復活し
42歳まで生き抜いた。
彼に関わったボランティアは500人ほどいるそうだ。

しかし、この映画は、お涙ちょうだいの難病ものではない。
明るく前向きな鹿野さんと
それに振り回されつつ
自分も元気をもらっていく周囲の人たちの明るい物語だ。
(泣いてた人もいたけど)

大泉洋は、好きな俳優だ。
こんな個性的な人は、使いにくいだろうと思うのに
次々と映画に出てくる。
いろいろな役を、自然にこなす。
多分、上手なんだろうなあ。
高畑充希も、去年「忘却のサチコ」というコメディードラマを見ていて好きになった。

鹿野さんに、多くのボランティアが召使いのように介護をする場面から、映画は始まる。
鹿野さんは、一人では何もできない。
動くのは口だけだ。
ボランティアたちに「水」「ごはん」「背中かいて」「頭起こして」「新聞!」と次々に要求し、みんな王様に仕えるように介護する。
挙げ句の果て、夜中の2時に「バナナが食べたい」と買いに行かせる。
「おれがわがままを言うのは、障害者でも、こんなふうに生きていけるというのがみんなの希望になる」云々と映画の中でいっていた気がするけど、これは、どうなんだろと思った。
わたしには、ボランティアたちは何かの修行をしているように見えた。
多分、説明が足りないのだ。
本物の鹿野さんが、本当に、こんなにもわがままであって
それでもボランティアたちが献身的に介護していたとすれば
そこには、理由があるはずだ。
わがままであるけれど、どうしても鹿野さんの人間性にひかれるとか
鹿野さんといると、自分も前向きになれるとか。
美咲ちゃんは、「鹿野さんといるときの方が自分らしくいられるような気がする」といっていたけれど
ほかのボランティアさんのつぶやきも聞いてみたかった。
「鹿野さんを見ていると、世の中に不可能なんてない気がしてくるの」とか
「だから、鹿野さんには、わがままでいてほしい」みたいな。
鹿野さんに関わった人々の声を聞きたいのだ。
鹿野さんの家庭環境も、もう少し知りたい。

限られた時間で
いかに主題からブレないように映画を作るとなると
割愛しなくてはいけないエピソードも多いのだろう。
映画の脚本や編集は難しそう。

今度はキムタクの「マスカレード・ホテル」、観に行かなくちゃ!
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ゆかいな床井くん

戸森しるこ「ゆかいな床井くん」(講談社)を読んだ。
yukainatokoikun
6年生の暦とユニークな床井くんを中心に描いた一年間の話。
大きな事件はなく
さりげない日常の出来事を綴っている。
短編連作。

大きな事件はないからつまらないかというとそうではなく
独特な視点がおもしろい。
そういえば12歳くらいのころはこんなふうだったかなと
自分のことを思い出したりする。
かなりほのぼの系。
6年生が主人公ではあるけれど
児童向きというより
大人が、懐かしい気持ちで読むのにむいている気がする。

戸森しるこは、言葉やネタのチョイスが絶妙だと思う。
センスがいいのだ。
何気ないエピソードの選び方も
「そこを切り取ってくるか」と思うし
表現もおもしろい。
そして、おしゃれだ。
こういうセンスは天性のものなのかな。
だとすると、かなり、うらやましい。

むこう岸

安田夏菜「むこう岸」(講談社)を読んだ。
読み応えのある作品だった。
mukougisi
山之内和真は、小さいころから勉強は得意だった。
ただ、人とコミュニケーションをとるのは苦手だ。
特に『レベルの低い』人間としゃべるのは好きではない。
父親は、医者。経済的に苦労したことはないが
尊大な物言いをする父親に、逆らえないでいた。
父からいいわたされた有名中学に
猛勉強の末、合格するものの、
成績不振により、退学を余儀なくされ
自分のことを誰も知らない公立中学校に転校する。

同じクラスの佐野樹希は、父親が酒を飲んだ後バイクを運転し、死亡事故を起こしている。
それをきっかけに心の病気を発症した母と
父親の死後生まれた妹の面倒を一人でみている。
父親は借金も残していて
母親は、働けないため生活保護を受けている。
同じクラスの男子に
「生活保護をうけているやつらは『生活保護』と書かれたTシャツを着ろ」といわれ
体操服にマジックで「生活保護」「ありがとうございます」と書くような激しい性格だ。

転校はしたものの、
友だちも作れず
前の学校をやめさせられたことがバレないかとヒヤヒヤしている和真。
樹希に弱みを握られ、
アベルという少年に勉強を教えるハメになる。

知らない世界というのは、想像しにくいものだ。
裕福な家に育った和真には
生活保護をうける暮らしというのは想像できない。
それでも、少しずつ理解したいという心が芽生えていく。
自分とはかけ離れた世界で生きている、アベルや樹希のことを考え
力になりたいと強く思ったとき
和真の世界は広がり、救われていくのだ。

「生活保護家庭の子どもがアルバイトをすると
 その分、生活保護額が減らされる」という問題は
わたしも、前から納得がいかなかった。
生活保護需給家庭の子どもは
アルバイトをしてほしいものを買うことができない。
お金を貯めて、進学することもできない。
生活保護をうけている家は、あくまで最低限の生活しかしてはいけない。
それって、どう?
やる気そがれるよなあ。

でも、、この本を読んで
いろいろな抜け穴があるのだと知った。
けどね、こういうのに、抜け穴っているの?
抜け穴じゃなくて、みんなに知らせてほしいんですけど。
この難しい問題を
樹希の夢のためになんとかしたいと考える和真は立派だ 。
「ぼくの知識や思考を、もっと大きなところに向けて放っていくとしたら?」
そこには、自分のことしか考えられなかった
未熟な和真はいない。

先進国の中で、日本の子どもの貧困率は高い。
17歳以下の子どもの約7人に1人が経済的に困難な状況にあると聞いた。
「貧しさ」も問題であるけれど
「困難」の方も見つめる必要がある。
困難の現状は、昔に比べると一筋縄には行かない。
こどもたちの抱える困難に、手を差し伸べる大人たちもこの物語には登場する。
居場所のないアベルや樹希に部屋を提供する喫茶店「居場所」の店主。
月に2回、子ども食堂をひらくお寺の住職。
無料学習塾「あおぞら」
なんの見返りも求めず
こどもたちを支えようとする市井の人々が静かに輝いているのだ。

鬼ヶ島通信70+1号打ちあげ会

昨日は、今年初めての東京行きだった。
一番の目的は「鬼ヶ島通信70+1号」の打ちあげ会。
でも、それは夕方からなので
その前に会いたい人に会ったり、仕事の打ち合わせをしたりした。

まずは、作家の堀田けいさんと東京駅で待ち合わせ。
待ち合わせたのは「丸の内北口」だったのに
新幹線を降りたら、八重洲南口、と全然違う方に来てしまい、かけ足で待ち合わせ場所へ。
すでにここでお上りさん状態。

とてもいい天気だったので、堀田さんといろいろ話しながら
江戸城方向へ。
「江戸城って、今も残ってるの?」
「皇居の近く?」
「皇居のまわり走ってる人って、どのルートで走るの?」
つぎつぎ聞きたいことが出てくる。
よく考えたら、東京駅で下りて歩いたのって、数えるほどしかない。
だいたいは、「東京會舘」とか「KITTE」とか行く場所が決まってて
いかに迷わずたどり着けるしか考えていないので
こんなふうに、のんびりまわりを見たためしがない。

二人で、かなり歩いて、気がついたら市ヶ谷の駅まで来ていた。
(といっても、市ヶ谷がどのあたりなのかはわかってない)
そこから、お互い、別の場所で仕事の打ち合わせがあり、
あとで合流する約束をして、わたしは地下鉄へ。堀田さんはJRへ。

わたしが向かったのは、神保町の駅のそばの、BOOK HOUSE&CAFE
ブックハウスカフェ
こどもの本の専門店だ。
さすが専門店。絵本を中心に、児童書がたくさん取りそろえられていて
ワクワクするお店だった。
わたしの本は「二年二組のたからばこ」が入り口付近にあった。
他の本が見当たらなかったけど、「売れたんだ」と思う(笑)
とりあえず、店長さんにご挨拶し、お礼を伝えた。
ここはお茶も飲めるので、編集者さんと少しだけ打ち合わせ。
そのあと、編集者さんが、神保町を案内してくださった。
新刊本を扱う店、古書店、専門書のお店。
神保町は、本屋さんがいっぱいだ。
本屋さんがあるというだけでうれしい。
懐かしくなるような構えの飲食店もたくさんあって
いいなあ、この町。
明るいうちに来て、散策すればよかった。

その後は、メインイベント。
鬼ヶ島通信の打ちあげ会。
鬼ヶ島通信の編集委員のほか、作品を寄稿した作家さんたちもたくさんいらしていた。
メンバーが気になる方は
「鬼ヶ島通信70+1号」をどうぞ。
onigasima701
昨日は、柏葉幸子さんもいらしていて
「地下室からのふしぎな旅」映画化のお祝いを伝えることができた。

まだ宴もたけなわの8時40分。
皆様にお別れを告げ東京駅へ。
一人でタクシーを拾えないわたしのために
堀田さんが、拾ってくれた。
その動作を見て
なるほど、大人の女は、こんなふうに颯爽とタクシーを拾うのね。
帰ったら練習しようと思った。

自宅近くの駅に着いたの24時をすぎていたのだけど
夫が迎えに来てくれてた。
寒がりなので、笑えるくらい厚着をして立ってた。
遅いから迎えに来なくていいよって伝えてあったのに。
本当は日帰りはキツいし、面倒だけど
着ぶくれてむかえにきてくれた姿を見ると
やっぱり、できる限り日帰りで帰ってこようと思った。
往復約6時間だけど(^_^;)

ぼくの、ミギ

戸森しるこ「ぼくの、ミギ」(講談社)を読んだ。
bokunomigi
赤い毛糸の靴下のヒダリは
ある夜、チェストからはい出す。
もうずいぶん前から姿が見えなくなってしまった
パートナーのミギを探すために。
「ぼくはゆっくりと歩き出した。
 ミギにふさわしいくつ下かどうか、ぼくは今、ためされている」

絵本だと思って手にしたら
絵本ではなかった。
文章量も文体も低学年むきではなく
中学年以上。
というか、大人向き。

一見、トイストーリーの靴下版のように読めるのだけれど
これはラブストーリーではないか。
互いに、相手のことを思いやり
どんな形になったって、君といることが大切なんだ。
ぼくらは今までずっといっしょだった。
二人で一つ。
一緒にいなければ意味がない。
この絵本をプレゼントした後
「ぼくは、君のヒダリになりたい」ってプロポーズしたら
いいんじゃないですか?
(だめか?)

センスのいい本だなと思った。
どこか翻訳文学を感じさせる、端正な文体に
アンマサコの幻想的で美しい絵がよく似合う。
装丁もいいなと思ったら、中嶋香織さんだった。
この人の装丁はいつも素敵だ。

さて、明日は、今年初めての東京だ。
ちょうど一カ月ぶり。
天気いいといいなあ。
プロフィール

yamamoto etsuko

Author:yamamoto etsuko
「神隠しの教室」(童心社)で、第55回野間児童文芸賞受賞。「先生、しゅくだいわすれました」「がっこうかっぱのイケノオイ」「ポケネコにゃんころりん」シリーズ、「テディベア探偵」シリーズ、「夜間中学へようこそ」などの著書を持つ児童文学作家。愛知県半田市在住 児童文学同人誌「ももたろう」同人、日本児童文学者協会会員 JBBY会員
〔家族〕 夫 息子その1(人間) 息子その2(人間)、息子その3ルウ(トイプードル) 息子その4モカ(トイプードル)

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