BUTTER

柚木麻子「BUTTER」(新潮社)を読んだ。
butter
三人の交際中の男を殺害したとして拘留中の梶井真奈子。
世の中を賑わせたのは、次々と男を手玉にとった梶井が、太っていて、美しくないことだ。
週刊誌の記者の由佳は、その独占インタビューをとりたいと拘留所に足を運ぶ。
なんとか梶井の興味を引きたいと考え、由佳は彼女のブログにある料理の話から入った。
もともと食べることにも作ることにも興味になかった由佳は、
彼女のいうままに、料理を作り、薦められた店に行き、その感想を伝える。
由佳は、次第に梶井に取り込まれていってしまう。

実際の「木嶋佳苗事件」をモチーフにした物語だ。

はじめの「炊きたてのごはんに、高級バターをのせ醤油を垂らしたバターライス」を皮切りに
ふんだんにバターを使った濃厚な料理がでてくる。
また、その表現が、本当においしそう。
読んでいるだけで2,3キロ太りそうだ。
そういえば、柚木麻子は「ランチのアッコちゃん」などでも
よだれが出そうなレシピを紹介していたっけ。
食べ物の描写がうまい人だった。

由佳が、梶井と会話をしている部分では、気がつけば、わたしも梶井に取り込まれていた。
梶井が言っていることがすべて正しくて、梶井こそが魅力的だ。
梶井の崇拝者に、わたしもなりかかっていた。
恋人とホテルで会ってから、深夜にひとりラーメンを食べに行く部分では
もう完全に掌中におさまっていた。

物語の中盤から、親友の怜子や篠井の存在感が引き立つようになってきて
由佳同様、梶井の世界から何度も引き戻してくれた。


料理には2種類あることに気づいた。
誰かに食べさせるための料理。
自分のための料理。
わたし自身は、料理は家族のために作るもので、自分一人だったらごはんに卵でもかけておけば十分だ。
でも、自分がたべたいものを、自分のために作る。
それってすごく大切なことのような気がしてきた。
梶井にとって料理は、男を虜にするためのものだった。
でも、自分のために作っていいのだと気づいたとき、梶井の道がかわる。
殺人事件と料理。
一見何の関わりもなさそうな二つが、大きく絡んでくる。
梶井が最後に作ろうとしていた「七面鳥の丸焼き」の下りは、せつなかった。

柚木麻子のインタビュー記事を読んだら
この物語に出てくる料理はすべて食べてみたそうだ。
物語の由佳は10キロ太ったが
柚木麻子は大丈夫だったのだろうか。
七面鳥も、ホントに焼いたんだろうなあ。四日がかりで。
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竹島水族館

蒲郡の竹島水族館に行ってきた。
ここは、日本で1,2を争うほど古くて狭い水族館。イルカもラッコもいない。入場料500円というお手頃さだけが取り柄だったところで、来場者数も少なかったのだが
若い飼育員さんたちの創意工夫で、今、来場者数はうなぎ登りらしい。
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今日も、午前中に行ったにもかかわらず水族館前は長蛇の列。
30分ほどならんで、ようやく中へ。

ここは、なんといっても飼育員さんの解説が面白い。
でも、面白いだけじゃなくて、ちゃんと特性も性格も書いてある。
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「それでもボクはわるくない」と書かれていたのはアリゲーターガー。
最近、名古屋城のお堀にいることで悪者扱いされているけど、ボクはなんにも悪くないと主張していた。
一つ一つの水槽に貼られた解説が面白くて、ついついていねいに読んでしまうので
お客さんたちの歩みも遅い。
中にはこんなのも。
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展示の仕方も楽しかった。
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このマンション、オーシャンビューらしいけど(笑)
中にちゃんとお魚が収まっていた。
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そして、すごいのは、これ。takesima44.jpg
漁師さんからもらったときに死んでしまった魚介類を試食して
そのレポートが張り出してある。
食べられるのか、食べられないか、そんなことはお構いなしに
あくまで自己責任で。
読んでいくと、オオグソクムシとかアリゲーターガーとかまで食べている。
「世界征服」がどうのこうのとかいう番組の「なすD」のような人が
この水族館にはいる。

今日は、満員過ぎて見られなかったが
アシカショーもある。
そして「全然いうことをきかないカピバラ」のショーも。
(なぜか、カピバラが2頭いる)

水族館を見た後は、外の売店でたこの唐揚げとねぎまとビール(わたしだけ。運転手の夫はお茶)を買って
横の海岸の堤防にすわって、海を見ながらのんびり。
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今度は、もっと人の少ない時期に来たいなあ。

パソコン暴走

一昨日の夜のことだ。
メールを打っている最中に、パソコンが止まった。
どうやっても文字が打てない。
しかたないので再起動することにした。

青い画面になり「再起動しています」と、いくつもの水玉がくるくる回る。
回る、回る、回る  5分経過
遅いなと思いつつ待つ、10分、20分、30分
遅い。
これはおかしくないだろうか?
夫に「再起動が終わらない」というと、「待つしかないんじゃない」というので
とりあえず待つ。1時間経過。どう考えてもおかしい。
もう強制終了しちゃお、と電源ボタンを長押し。1,2,3とカウントしていくが
20になっても30になってもいっこうに消えない。
ええっ! そんなことってあるの?
暴走してるとしか思えない。

夫と息子その1がやってきて、「コンセント外して、自然に切れるのをまとう」ということになった。
バッテリーは、簡単に外せそうではなかったので、充電が切れるのを待つ。
パソコンは、ずっと「再起動しています」と言い続けている。

どうなっちゃったんだろう。
TwitterでSOSを出したら、令丈ヒロ子さんが「放置しておくと直ることもある」と教えてくださった。
そうか。放置か

パソコンの具合も気になるが、最終手段は修理に出せばいい。
ただ問題がひとつ。
わたしは、「ももたろう47号」の編集当番なのだ。
みんなから原稿が送られてくるのだ。
締め切りは2日後。(その時点では)
集まってきたデータ原稿を、わたしがまとめてサンタポストさんに送るのだ。
どうしよう。
最悪、みんなに電話して、他の人に編集当番を代わってもらえたとしても
わたしの原稿はどうしたらいいの?
息子のパソコンを借りて打ち直す?
あと二日じゃ、なんともできないよ~。゚(゚´Д`゚)゚。

寝る時間になってもパソコンは「再起動状態」なので、そのままにして就寝。

翌朝(つまり昨日の朝)、パソコンの画面は真っ暗になっていた。
コンセントを入れ、おそるおそる電源ボタンを押す。
が、反応なし。
何度押しても真っ暗なまま。

もうだめだ。
ももたろうは今回はお休みするしかない。
いやそんなことより、書きかけの原稿はどうなっちゃうんだろう。

地獄に突き落とされた感じ。
朝食も食べる気になれない。

と、そこへ息子その1が起きてきた。
パソコンの状態を話すと、工具箱から小さなドライバーを持ってきた。
「バッテリー、一回外せないかな」
とパソコンをひっくり返す。
で、開けてみたけれど、バッテリーは、そこからは見えず
素人が絶対に触ってはいけないオーラがあふれていた。
「ちょっといじれないな」
と、もう一度ふたを閉じ、パソコンをひっくり返りしたとたん
電源が入ったのだ!

暴走の原因も直った理由も
なにもわからない。
このパソコン、今年買ったばかりなのに。

息子は「母さんが触るから壊れる」という。
そういえば、教員時代、わたしの触れたCDが次々壊れることがあって「破壊神」といわれたな。

毎度毎度パソコンの調子が悪くなるたびに
死にそうになる。
パソコンを壊さない方法を誰か教えてください。

15歳、ぬけがら

栗沢まり「15歳、ぬけがら」(講談社)を読んだ。
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15歳の麻美は、市内で一番古い市営住宅に母親と住んでいる。
母親は、心療内科に通っているが、家事をせず、家の中はゴミ屋敷状態だ。
水道は止められ、給食以外にまともな食事はない。
それなのに、夏休みが来てしまった。
同じ団地の翔は、「まなび~」という学習支援塾に通っている。
授業料は無料。お昼ごはんもおやつも食べさせてくれる。
大学生ボランティアの唯さんや塾長に出会い、麻美の心は少しずつ変化していく。

麻美の苦悩が、私には痛いほどよくわかった。
私も、中学の3年間は本当に「お金がない」暮らしをしていたから。
それまでも豊かだったわけではないが、当時はどん底だった。
高校に入った頃から、少しずつ我が家の経済は持ち直してきたが
あの3年間の貧乏は骨身にしみた。
母はよく言った。「お金がないのは、首がないのも同じ」
貧乏だと、人扱いされないのだ。
麻美が、友だちに迫害されてもなにも言い返せないのは、「貧乏だからしかたない」と感じているからに違いない。
だって、どうしようもないもの。
どうにもならないもの。

お金がない、食べ物がない、家がきたない。
「それがなに? 人間にとって一番大事なのはそんなことじゃないのよ」といわれるかもしれないけれど、
こういうことは人間の自信や尊厳をぼろぼろにしていくのだ。
そのくせ「同情なんてされたくない」と思う。
必要以上に敏感になって、びくびくしたり、虚勢をはったり。
麻美が、はじめに「まなび~」の説明会で感じた「上から目線」「ほどこし」は、そういうことなのだ。

「15歳、ぬけがら」というタイトルをみたとき、
「ぬけがらのようになってしまった中学生」の悩みの話かと思ったが、全然違ってた。
ぬけがらには、そこまでの生き様があらわれている。
強いぬけがらになりたいという、
力強い宣言なのだ。
ぬけがらのくだりは、胸にしみた。
和馬との別れの場面も切なかった。
でも、この選択が一番正解だったと思う。

ストーリーに、強引なところがなく
麻美の心の変化も自然で、共感できた。
最後にパン屋さんのおばさんと話せて、よかったなあ。

なんとなく「雰囲気がある、悩める中学生の出てくるYA」かと思ったら
リアルで、力強い文学だった。
デビュー作で、こんなにうまいとは。
2作目も楽しみ。

アリゲーターガーの孤独

昨日は、所用で名古屋の市役所の方にいっていた。
2時間ほど外を歩き回り疲れていたせいか、ランナーズハイのような状態になり、
突然「ここまで来たなら名古屋城に行こう」と思い立った。

なんで名古屋城かというと、お堀が見たかったからだ。
数年前からアリゲーターガーが住み着いているのだ。
なんどもテレビで捕獲作戦の様子をやっているので
愛知県民なら誰もが知ってるだろう。
2,3ヶ月前に1匹つかまったが
もう1匹いるらしい。
大きさは150センチ以上あるらしいから、
ほぼ私とかわらない。
おそらくペットとして飼われていたものだろう。
捨てられたのだ。

1匹つかまったというニュースを聞いたとき、急に心細くなった。
1匹になったアリゲーターガーは、どうしているのだろうか。
お堀の他の生きものを食べるから、つかまえなくてはいけないみたいだけど
それは、わかるけど
アリゲーターガーは、ただ、一生懸命生きてるだけなのだ。
おなかが空けば、食べる。
人と同じだ。

ヌートリアが繁殖して困っているとか
キョンが木の根を食べてしまうとか
そのために駆除をしているとか
そういうニュースを聞くたび胸が痛む。
もともと、この地にいたわけじゃなくて、人間の都合で連れてこられたのに。
ただ、必死に生きてるだけなのに。
駆除している人たちだって、そんなことは十分わかっている。
それしか方法がないから
「かわいそうだけど、仕方がない」という苦渋の決断なのだ。
でも、胸は痛む。
何の権利があって、人間は、と思う。

名古屋城のお堀は、予想以上に大きかった。
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お堀に近づくと、コイがどんどん近づいてくる。
そのコイの大きいこと!
私の太ももくらいの大きさだ。
アリゲーターガーも、これは食べられないだろう。
あごがはずれそうだ。

お堀をぐるっと歩いたが、当然、アリゲーターガーは見つからなかった。
こんな広いところで
たったひとりで、
みんなから疎まれ、排除されようとしているアリゲーターガー。
捕獲されたアリゲーターガーのお腹からは
なにも食べ物は見つからなかったそうだ。
アリゲーターガーのお腹の中には、きっと孤独がつまっている。


話は変わるが
「先生、しゅくだいわすれました」、増刷のお知らせをいただいた。
なんと、なんと、15刷!

ありがとうございます!


プロフィール

yamamoto etsuko

Author:yamamoto etsuko
「先生、しゅくだいわすれました」「がっこうかっぱのイケノオイ」「ポケネコにゃんころりん」シリーズ、「テディベア探偵」シリーズ、「夜間中学へようこそ」「神隠しの教室」などの著書を持つ児童文学作家。愛知県半田市在住 児童文学同人誌「ももたろう」同人、児童文学者協会会員 JBBY会員
〔家族〕 夫 息子その1(人間) 息子その2(人間)、息子その3ルウ(トイプードル) 息子その4モカ(トイプードル)

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