FC2ブログ

ぼくたちの緑の星

小手鞠るい「ぼくたちの緑の星」(童心社)を読んだ。
midorinohosi
その世界では、人は名前を無くしている。
パーソナル番号が名前のかわりだ。
学校では、教室内の質問は禁止。
生徒同士の会話も許されていない。
音楽や図画工作という「創造力」「思考力」を育む教科は無くなり
「キホン」「オウヨウ」「ジッセン」といった学習をくりかえしくり返し行い、
ジュウゾクすることだけが求められる。
そんなある日、ぼくは、地図を拾う。
そこに書かれていたパーソナル番号に
隠し持っていた通信機から連絡をする。
すると、思いがけない返事が返ってくる。

自分で考えたり、感じたりしないように
心を動かしそうな物は全て排除。
感覚が麻痺していくように、くりかえしくりかえし、意味の無いことをさせる。
人と心を通わせないようにする。
恐ろしい世界だなあと思ったけれど
ふと気づいた。
もしかしたら現実の世界も、これに近づいているんじゃないのか?
世界の中には
既にこれに似た国があるのではないか?
日本はどう?

近未来の話なのかと思ったら
そうではなかった。
というのが、最後の一行でわかった。

NHKの少年ドラマシリーズが今もあったら
絶対ドラマ化されるな、この話。



東京の今日の感染者数は、100を越えたらしい。
東京を核にして
その周辺の県もまた増えつつある。
心配だなあ。
やれることは全部やってると思うのに。
みんな、疲れちゃうよなあ。
スポンサーサイト



一富士茄子牛焦げルギー

たなかしん「一富士茄子牛焦げルギー」(BL出版)を読んだ。
nasuusi
元旦の朝、おとんが夢を見たという。
茄子のすがたをした牛に乗って、
富士山の火口までいった。
富士山に餅をやったらお礼に願いを叶えてくれるといわれた。
そこでおとんが頼んだのは「餅が焦げんようにしてください」だという。
そうしたら、それは本当になって、
日本中の餅が焦げなくなってしまった。
願いは、もう一つ叶えてもらえるらしく
その権利は、主人公・ぼくにゆずられたらしい。
じゃあ、何を頼む……となって、親子は顔を見あわせる。
願いはひとつ。
おかんを生きかえらせてもらう。

おかんは、3年前飲酒運転の車にはねられて、頭を打ち亡くなっている。
犯人は、未成年で、しかもおかんが事故の直後に死んだわけでないため、
たいした罪になっていない。
のうのうと暮らしている。
ぼくもおとんも、やりどころのない怒りと悲しみを抱えて生きてきた。


関西弁の漫才のようなやりとり。
「餅を焦がしませんように」というくだらない願い。
だいたい初夢で願いが叶うってなんなんだと
ちょっと冷めた気持ちで読んでいた。
でも、読んでいくうちにどんどん引き込まれていった。
なるほど、こういう展開なのか。

大切な人を亡くしたかなしみが
リアルに語られていく。
あっけらかんとしていたおとんの、
ぎりぎりの行動に胸が痛くなった。
辛くて辛くて辛くて、それでも残された人間は生きていかなければいけない。
夢の中でぼくが歌う「蛍の光」が泣けた。

今まで読んだ児童書とはまったく違うが
中学生くらいの子にオススメ。

ちなみにこの作品は、日本児童文学者協会新人賞を受賞している。
満場一致で決まった(と本人が言われたらしい)そうだ。
なんかたくさん作品があるみたいなんだけど
新人賞なのが、ちょっと不思議。
他は絵本だからかな?

ミニトマトが一気に赤くなってきた。
2020622tomato
下は庭に自生しているレインリリー。
622lily
本当の名前は、サフランモドキっていうらしい。
でも、レインリリーのほうがかわいい。

ゆりの木荘の子どもたち

富安陽子「ゆりの木荘の子どもたち」(講談社)を読んだ。
yurinokisou
100年以上前から建っている「ゆりの木荘」。
今はリフォームして老人ホームになっている。
そこでくらしているおばあさん、サクラさんが手まり歌を口ずさむと
大きな柱時計が逆回りし
みるみる時がもどり
気がついたときには、みんな子どもになっていた。
日にちは、昭和16年8月3日。
これが、お話の鍵になっている。

おもしろかった~。

昭和16年ときいたとき、
悲しい物語になっていくのかと思ったけれど
とんでもない。
胸がじんとする、温かい物語だった。

富安陽子作品のすごさは
あっという間に物語の世界に吸い込まれてしまうところだ。
柔らかい文章なのに、スピード感がある。
それなのに、風の音や花の香や、木々のざわめきなどの描写もしっかり書き込まれている。


富安さんの作品を読むたび
「ああ、わたしもこういう物語が書きたい」といつも思う。

ゆりの木って、どんなきなんだろう。
百合の花ならわかるけど、ゆりの木って……。
「ユリノキ」で調べてみたら、出てきた。
yurinoki
なるほど、ストーリーにぴったりな美しい木だった。


玄関先のパンジーに、
毒々しい色の幼虫発見!
なんだ、これ? と調べたら
ツマグロヒョウモンの幼虫だった。
tumaguryouchu
はじめまして。
君は本当は南国の蝶らしいよ。

セイギのミカタ

佐藤まどか「セイギのミカタ」(フレーベル館)を読んだ。
seiginomikata
小学4年のぼく・木下守は、ちょっとしたことで
すぐ顔が真っ赤になってしまう。
3年までは、それでも大丈夫だったのだけれど
4年になって大我といっしょになってから、からかわれるようになった。
「トマトマン」とあだ名をつけられ、
「早く変身しろよ」と大我の仲間たちからもはやし立てられる。
そんなとき「やめろよ!」といってくれるのが、周一だ。
でも、守は、周一を疎ましく思っていた。

“お前がさわぐとことが大きくなるんだよ。ほっといてくれよ’
周一に対してそう感じてしまう守の気持ちは、よくわかった。
これは遊びの延長なんだと、自分に言い聞かせてしまえば
事を荒立てることなく、今をやり過ごせるのだ。
(でも、本当はこれが一番危険なのだけど)
ほっておけない周一のまっすぐな気持ちは、とても貴重だ。
低学年は、自分の中の正義に正直だ。
でも中学年あたりから、変化が現れる。
学年を重ねるにつれ、空気を読み、他人の目を気にして
自分の考えを言わなくなっていく。
周一は、勉強はできるが、そういう点は幼い頃の純粋さを持ち続けているのだと思う。
物語では、周一は最後の最後まで自分を変えない。
その筋の通った態度が
守に一歩踏みだす勇気をくれる。

中学年に読ませたい話だなあと思った。
考え方の転換期にあたる中学年がこれを読めば
「空気を読んで不条理に口をつぐむ」安楽さではなくて、
「勇気をだして、自分の考えを貫く」方向に舵を切ってくれるのではないか。
何よりも元気がでる!

この物語は、これからを生きる小学生の子たちへのエールだな。


暑くなってきたので
「冷感マスク」なるものを夫に買ったら
裏表がわかりにくいから、なにか印をつけて欲しいというので
pingu
ピングー、つけといた。
何かもんくをいうかと思ったけど、
今朝、黙ってつけていった(ノ∇≦*)

てのひらに未来

工藤純子「てのひらに未来」(くもん出版)を読んだ。
tenohiranimirai
琴葉の家は東京で佐々川精密工業という町工場を営んでいる。
家族は頑固な父親と太っ腹な母親、小学生の弟、そして住み込みの従業員・天馬。
天馬は、まだ17歳。琴葉と3歳しか離れていない。
二年前、中学を卒業して、ここに来た。
自分の感情を出すことがないが、工場の仕事は黙々とこなしている。
うでのいい職人さんを何人も抱えた佐々川精密工業だが、
最近どうも資金繰りに困っているのではないかと、琴葉は気づく。
それは、大きな仕事を断ったことが原因らしい。
なぜ、断ったりしたのだろうと、琴葉も天馬も疑問を抱く。
そんなおり、天馬がなぜ、この家に来たのかという理由を琴葉は知る。

いろんなことが、ぎゅっと詰め込まれ
読み応えのある物語だった。
すごくよかった。

終戦から七十余年。
日本は、平和そのものだと思いがちだけれど
実は、戦争が落とした影は今だに残っている。
今、ここにある平和だって、いつ消えてなくなるかしれない。
戦争には、全然関わっていないはずのこの国も
実は、間接的に関わっているのだ。
未来を作っていくのは、今、このときの自分たちなのだ。
そんなことを改めて感じさせてくれる物語だった。

作者の近年の作品には
社会的な問題に目をむけているものが多くみられる。
子どもたちに伝えるべきものを見極め、
しっかりと書いていこうという
作者の熱い思いが感じられる。

ただ……

わたし的には、天馬くんのかっこよさにメロメロだ。
キャー。なに、このかっこいい子。
表紙絵の天馬くんからして、すてきすぎ。
え? うしろから手をそえて、そんなこという?
うわ~。それは、やられるわぁ。
いとうみくの「車夫」に出てくる走くんと並ぶかっこよさだ。
琴葉の恋の成り行きも
きゅんきゅんしながら読み進めた。

ミーハーな読者ですみません。
プロフィール

yamamoto etsuko

Author:yamamoto etsuko
「神隠しの教室」(童心社)で、第55回野間児童文芸賞受賞。「先生、しゅくだいわすれました」「がっこうかっぱのイケノオイ」「ポケネコにゃんころりん」シリーズ、「テディベア探偵」シリーズ、「夜間中学へようこそ」などの著書を持つ児童文学作家。愛知県半田市在住 児童文学同人誌「ももたろう」同人、日本児童文学者協会会員 JBBY会員
〔家族〕 夫 息子その1(人間) 息子その2(人間)、息子その3ルウ(トイプードル) 息子その4モカ(トイプードル)

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR