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ひいな

いとうみく「ひいな」(小学館)を読んだ。
hiina
母親が海外に仕事に行く都合で、由良は祖父母の家に預けられることになった。
由良は自分が生まれて母と祖父が仲たがいしたことで、「生まれてきちゃいけなかったのかも」と感じている。
祖父母の住む町は、人形の町。
古く、うでのいい人形職人さんたちが多くいたらしい。
駅舎にもお雛様が飾られていた。濃姫とお付きの者たちだ。
彼らは、乗降客のほとんどいない駅に飽き飽きしていた。
人に見られ、愛でられてこそのお雛様なのだ。
なんとか功徳を積み、ここから脱出したいと考えていた。
そこに現れた由良の厄を引き受ける「身代わり」となることを申し出る。

お雛様といえば、雅なイメージだが
ここに出てくる女雛、濃姫は、お行儀も悪く、活動的だ
ハエに憑依して、由良を守りに行く。
本来なら「厄を代わりにうける」だけのはずが、「厄」をはねのけようとする。
戦うお雛様なのだ。

まるで、濃姫のパワーが移ったかのように、由良は強くなっていく。
由良の成長ぶりが小気味よい。

いとうみく、上手い!

お雛様は、女の子、ひとりに一つ。
その子の成長を守り、厄を受けてくれる。
そんな文を読んで、すこしさびしくなった。
わたしも姉もお雛様をもっていないからだ。
同居の祖父母は、長男の嫁には跡取りの男の子を産んで欲しかった。
女の子は必要ではなかったのだ。
そんな子にお雛様は買ってもらえない。
従姉妹のお雛様を見るたび「なんでうちにはないの?」と母に聞いた。
そのたび「うちには女の子はいないから」と煙に巻かれた。
母自身も、片親で貧しくお雛様などもっていなかった。

わたしが母親になったら、絶対買おうと思っていた。
七段飾りなどではなく、上品な顔立ちの女雛と男雛がなかよくならんだお雛様。
関係ないけど、シルバニアファミリーも買おう。
そう思っていたのに
生まれたのは、男ばかり。姉も然り。

けど、これを読んで、俄然買いたくなった。
小さなお雛様、買おっと。
わたしのために!
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きみのためにはだれも泣かない

梨屋アリエ「きみのためにはだれも泣かない」(ポプラ社)を読んだ。
kiminotameniha
中1の鈴理は、自転車で転んだひいおじいちゃんの下敷きになってケガをした高1の彗を運命の人と思い込み、ストーカーまがいにつきまとう。その彗は、同じクラスの夏海にふられつづけている。夏美は、親友の未莉亜が恋人の山西からDVを受けているのではないかと心配し、その山西を好きなのが美希。
 ざっくり言えば恋愛小説。誰もが誰かに恋してて、それは、多分思い込みや妄想からできている。
 
7人の語り手が次々に入れ替わりながら話は進む。
語り手以外にも、語り手の親友とか妹とかどんどん出てきて胸の内を語るので
正直言うと、途中で誰が誰を好きで、誰と誰が友だちで、
以前に誰を好きだったかなどがわからなくなってきた。

そんな中で、中一の鈴理に告白され、勝手に理想の人扱いされている
バカでエロな彗が、なかなか人間らしくてかわいい。
こんなのを「運命の人」と暴走する鈴理も、「こういう子、いる」と思う。
多分、どの登場人物もかなりリアルだと思う。
中高生って、いつも誰かが好きなんだよね。

タイトルからして「胸キュンもの」かと思ったが、そうではない。
悲しかったり苦しかったりしても、誰かが代わりに泣いてくれるわけじゃないから
自分で自分を大切に、みたいな感じかな。

これ「きみスキ」という話の続編らしいが
この本から読んでも一向に差し支えないと思う。

佐藤さとる先生

作家の佐藤さとるさんが亡くなった。
2月9日。88歳だったそうだ。

まだデビュー前、同人誌「鬼ヶ島通信」の温泉旅行にこないかと誘っていただいた。
「鬼ヶ島通信」の新人発掘コーナーに入選したばかりのころだ。
熱海の温泉。わたしは、現地に直接うかがった。
宿には、わたし以外にも入選者の人(堀切リエさんと平竹元子さん。後のももたろう同人)がいて
「本当に佐藤さとるさんもいらっしゃるの?」「どうしよう。ドキドキしてきた」と騒いでいた。
子どものころ大すきだった「誰も知らないちいさな国」の作者。
雲の上の人だった。

はじめてお会いした佐藤先生は、穏やかな方だった。
「ここまでこられたということは、才能があるってことですよ」と
先生は言ってくださった。
「だから、がんばりなさい」と。

その夜はビンゴ大会などもあり、
よりによって先生には、女性ものの下着があたった。
「なんだ、これは」と照れた顔で笑っていらした。

「誰も知らないちいさな国」のセイタカさんに見えた。

末吉暁子先生が作家になったのは、
当時編集者として佐藤先生の担当だったとき
「あなたも、書いてみなさいよ」と言われたからだと聞いている。
そんなふうに後陣を育ててみえた。
大御所でありながら大御所ぶったところのない方だった。

また一人、児童文学界を支えてきた偉大な作家が逝ってしまった。

合掌

コンビニ人間

村田沙耶香「コンビニ人間」(文藝春秋社)を読んだ。
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幼いころ、死んだ小鳥を見て、友だちが泣いて「お墓を作ろう」と言っている中「焼き鳥にして食べよう」と提案する主人公恵子。
みんなが引いても、その理由がわからない。
ケンカを止めるため、ケンカをしている友だちをスコップで叩き、流血騒ぎになっても「これが一番はやいのに、何が悪い」と思う。
「普通」ではない娘に家族は狼狽し、カウンセリングなどにも通った。
そんな恵子は、大学のころからコンビニでバイトをし、卒業後も働きつづけ18年も同じコンビニで勤めている。
コンビニは、恵子にとってとても居心地よい職場であるのだが
「なぜそんな年になってアルバイト?」「なぜ結婚しない?」と
周囲から責められ生きにくさを感じている。

アスペルガーってことかな。
と思いながら読んだ。
恵子ほどではないにせよ、他人と自分の感覚の違いに驚いたり
ほかの人間に合わせてみたり
ほかの人の口調や服装が移ったり、
そういうことは誰しもあるだろうから、「ああ、わかる」と思うのかもしれない。

「普通」という基準は曖昧だ。
誰もが「普通」でありたがっている。
普通というステージから、普通じゃない人々を見下したがっている。
けれど、時々うしろを見上げ、自分が立っているステージが
本当に「普通」なのか。
自分を見下ろしている人はいないのか確認する。

芥川賞」の作品って、高尚すぎるのか、わたしの頭が悪いのか
イマイチ、ついて行けなかったりするのだけど
これはおもしろかった。

けど、こういう私小説っぽいのって
ついつい作者=主人公って思われがちだ。
村田沙耶香は、記者会見で「コンビニに勤めている」と言ってしまっているので尚更だ。
実際のところ、作者はどんな人なのか。
ちょっと興味はわく。

花舞う里

古内一絵「濱舞う里」〔講談社)を読んだ。
hanamausato
東京から母の故郷奥三河の澄川に引っ越してきた14歳の潤。
二人乗りをしていた自転車で、運転していた親友が亡くなり、自分だけが生き残るという衝撃的な体験をしている。その心の傷が癒やせないままでいる。
転校先の学校は、小中いっしょになっていて、中二のクラスは潤を含めても4人だ。
何もかも、東京とはちがう。
この町では「花祭り」という伝統行事が行われていた。
それぞれに心の傷を持った子どもたちが、花祭りに関わっていくことで成長していく物語。

奥三河の花祭りは実際にある祭りだ。
教員時代、5年生をもつとみどりの学校というのに行くのだが
その宿泊施設のある町の行事で
本物の祭りは見たことはないけれど、ビデオを見せてもらったり
鬼の面なども見せてもらった。
でも、こんなふうに練習を重ねて、やっているのだとは知らなかった。
ただ、事前にビデオを見ていたことで、祭りの様子は目に見えるようだった。

この世には、個人の力ではどうすることもできない痛ましい出来事が起こる。
その絶望や怒りや寄る辺なさを踏みしめて生きていくしかない。
どんなに苦しくても、立ち上がるしかないのだ、人間は。
そんなことを感じさせる物語だった。

お話の中の三河弁がところどころ「あれ?」と思ったけれど
奥三河は、西三河や東三河とはちがうのかもしれない。
中途半端に方言がわかるのもやっかいだ。

10日に、竹良実「辺獄のシュベスタ5」(小学館)が発売された。
hengoku5
今回も、すごい迫力!
是非たくさんの人に手にとって欲しい。

ドールハウスはおばけがいっぱい

柏葉幸子「おばけ美術館4 ドールハウスはおばけがいっぱい」〔ポプラ社)を読んだ。
dollhouse
木かげ美術館には、不思議な美術品ばかりが飾られている。
別名「おばけ美術館」。館長は、おばけが見える子どもでなくてはいけない。
現在の館長は5年生のまひる。
池之端美術館に貸し出ししている絵の少女ジョイから、おばけ美術館のなかまにSOSの電話が入る。
なんだか気味の悪い女の人がいて怖いというのだ。
(自分だっておばけのくせに)
翌日、チューリップの妖精のリップをお供に池之端美術館へ。
まひるは、そこで会った不思議な女の人に小さくされ、気がつくとドールハウスの中にいた。

人気のおばけ美術館シリーズの第4弾。

ここにでてくるおばけたち、パソコンでメールをおくったり、電話をかけたり
なかなか現代風だ。
おばけのくせに、妙に明るく、人情に厚い。
そして、いたずらで子ども好き。
こんな美術館があったら、行ってみたいと、こどもならだれでも思うだろう。



地域でのポジション

本日の夕方、犬たちの散歩中に声をかけてくれた幼稚園児二名、小学生4名。
小学校も中学校もう幼稚園も近いので、いつも何人も声をかけてくれる。
遠くの方から「えっちゃんせんせ~い」と声をかけてくるのは、教え子の子どもとその友だちだったり、その友だちの友だちやら兄弟やら。
「あっ! 山本さんだ!」というのは、前に授業にいったクラスの子だと思う。
「ルウちゃん、モカちゃん」と駆け寄ってくるのは、わたしではなく犬目当ての小中学生。
前に高学年の女の子たちから犬の散歩中「作家の山本さんですか?」と声をかけられたこともある。
「図書館に写真が飾ってあったから」と言っていた。
もちろん、知らない子も多いのだけど
「地元で」「本を書いている」「犬を二匹つれて散歩している」おばちゃんと認識されているらしい。
突然「神隠しの教室、読みました」と話しかけられたこともあるし、
「えっちゃん先生、新しい本でた?」と聞かれたこともある。

このポジション、けっこう気に入っている。
地元に住む童話作家に、道で感想を言うってなかなかないシチュエーションだと思うし。

毎朝通園の途中に会って、ルウモカの散歩をしながらいっしょに歩く幼稚園の子の一人が
この春小学校に入学する。
3月になったら、入学祝いに、わたしの本を一冊プレゼントさせてもらおうと思う。
「図書室に、ほかにもおばちゃんの本があるからさがしてね」と言って。
いつも会うおばちゃんが、本を書いているって信じてくれるかな?

コーヒーが冷めないうちに

川口俊和「コーヒーが冷めないうちに」(サンマーク出版)を読んだ。
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古い小さな喫茶店「フニクリフニクラ」
ここに来れば過去屋や未来に行くことができる。
ただしコーヒーが冷めてしまわない短い時間。
しかも、過去にいって誰かに会ってなにかをしたとしても現実は変わらない。
過去にもどることのできる座席はたった一つ。
その席にはいつもワンピースの女性〔幽霊)がすわっていて、その幽霊がトイレに立つ間だけすわることができる。
過去にいってもその座席から動くことはできない。
過去や未来に行って会うことができるのは、その店にその時間に来ているものだけ。

と、まあ、いくつものルールがある。
そのルールの中で、過去や未来にむかう四つの物語。
一つは、結婚するつもりだった恋人と別れた女性。
二つ目はアルツハイマー病の夫をもつ妻
三つ目は亡くなった妹を思う姉
四つ目は命をかけて赤ん坊を産もうとしている母親

帯に「4回泣けます」と書いてあったが
泣くところまではいかなかった。
暖かい話ではあると思う。
設定の面白さで読ませる物語だ。
35万部売れてるらしいが、本屋大賞にノミネートされて、さらに売れていることだろう。

本屋大賞。昔は、「本屋さんだからこそ知る傑作」だったが
最近は、直木賞や芥川賞受賞作や
すでにベストセラーになっている本が多い。
書店員さんから見てもおもしろいのだからしかたないが
「今一番売りたい」といわなくても既に売れているじゃんとも思う。

といいつつも、やっぱり「本屋大賞」は楽しみだ。
直木賞や芥川賞より楽しみ。
今回は、児童文学出身の村山早紀の「桜風堂ものがたり」も入っている。
童心社の担当のHさんは、古くから村山さんの担当でもあるので
個人的にちょっと親近感を持ってもいる。
わたしのことなんて知るはずもないと思っていたら
「ポケネコの山本さん」と知っていてくださったのもうれしい。

町の本屋さんがどんどん閉店していく中で
「本屋大賞」とか「文庫X」とか
書店さんからの発信が話題になるのはうれしい。
本屋大賞ノミネートの本、わたしも買わなくちゃ。


寝にくいでしょ?

息子その3が、ソファの上のクッションにのぼって寝てた。
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寝にくいでしょ?

マカン・マラン

古内一絵「マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ」(中央公論新社)を読んだ。
makanmaran
マカン・マランとはインドネシアの言葉で「夜食」を意味する。
夜だけ開店する(しかも不定期に)「マカン・マラン」をやっているのは、厚化粧のドラァグクイーン。
世間では「オカマ」といわれる人物だ。
名前は、シャール。
昼間は、ドラァグクイーンや社交ダンスの衣装を扱うお店をしている。
そのお店のお針子さんたち(同じくオカマの)用にはじめた夜食に、いつの間にか客がつくようになってしまった。

その「マカン・マラン」にまつわる短編が四作。
いずれも、この店を止まり木に集ってきたお客さんの話だ。
ここに来る客の多くは、疲れていたり、悩んでいたりする。
シャールは、顔色や口調からその人の体調を見、お客にぴったりの夜食をだしてくれる。
みんな、ここで心を癒やし、もう一度歩きだすのだ。

出てくる夜食が、本当においしそう。
辛さや苦しさを、ぜんぶ溶かしてくれるような夜食。
こんなの、誰かにつくってもらいたい。
できれば、シャールに。

だって、このシャールというオカマの中年男性が、本当にステキなのだ。

最近疲れているなという人にオススメの本。

この「マカン・マラン」、先日読んだ「フラダン」と同じ作者なのだが
Twitterに「『フラダン』が、すごくよかった」と書いたら
小峰書店の「フラダン」の担当(っていうか古内一絵の担当)編集者の人が
「こちらもいいですよ」と薦めてくださった。
おかげで、また、いい本に巡り会えた。
Yさん、ありがとうございました。
プロフィール

yamamoto etsuko

Author:yamamoto etsuko
「神隠しの教室」(童心社)で、第55回野間児童文芸賞受賞。「先生、しゅくだいわすれました」「がっこうかっぱのイケノオイ」「ポケネコにゃんころりん」シリーズ、「テディベア探偵」シリーズ、「夜間中学へようこそ」などの著書を持つ児童文学作家。愛知県半田市在住 児童文学同人誌「ももたろう」同人、日本児童文学者協会会員 JBBY会員
〔家族〕 夫 息子その1(人間) 息子その2(人間)、息子その3ルウ(トイプードル) 息子その4モカ(トイプードル)

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